「PBA医薬マーケティング・アカデミー」6月講座を去る16日に開催した。

今回のテーマは“医薬品業界のパラダイム・シフト”とし、講師には次のお二人にお越し頂いた。

★東邦薬品株式会社 代表取締役社長 河野博行氏

★ドイツ証券株式会社 ディレクター・アナリスト 舛添憲司氏

今回の講座を通して改めて考え直さざるを得ないこととして、「選択と集中」とは一体何ぞや

ということだ。

大手企業にとっての「選択と集中」と、中堅企業にとっての「選択と集中」は中身を同次元で

捉えてはならないということに気づくであろう。

その一つの例として、新薬開発領域の問題がある。

大手企業は、軒並み「がん」領域を重点開発戦略領域に定めている。

これに対して、中堅企業も「がん」を重点領域に定めてしまうことが得策なのかということ。

「がん」領域は、今や“抗体医薬”や一歩進んで“ワクチン”、“核酸医薬”へと進んでいる。

ところが、大手企業ですら、それら高付加価値技術を元々備えている企業など無きに等しく、

軒並みバイオベンチャーの買収で「技術」と「品物」と「時間」を買った。

中堅企業も大手企業に右へ倣えして「がん」領域に特化することは、もはや無謀とさえ映る。

ここに「選択と集中」の意味合いが大手と中堅では異なるのは必然と言える。

 

中堅クラスでは元来「がん」領域に集中投資してきた協和発酵キリン、大鵬薬品、日本化薬

を除いては、新たに高付加価値技術を必要とする「がん」領域にシフトすることは回避した方

が賢明ではないか。

考えようによっては、生活習慣病領域でも従来の「作用機序」以外にも解明されていないもの

は、まだ数多く残されているわけであり、新作用機序による新薬開発を進めることは否定

されるものではなかろう。

昨今の糖尿病領域における「インクレチン作用薬」は、その最たる例と言える。

特許が切れたものは、今後の医療費抑制策によってジェネリックと同価格にされることは

充分予想されることゆえ、新たな作用薬の発見によって、高薬価の新薬を生み出すことに

チャレンジしてもらいたいものだ。